Article

免疫学:ヒトT細胞受容体–CD3複合体組み立ての構造基盤

Nature 573, 7775 doi: 10.1038/s41586-019-1537-0

αβT細胞受容体(TCR)は、CD3γε–CD3δε–CD3ζζシグナル伝達六量体と会合していて、T細胞の発達や活性化、また外来抗原に対する免疫応答の重要な決定因子である。このTCR–CD3複合体組み立ての機構は分かっていない。今回我々は、CD3六量体と複合体を形成したヒトTCRαβの分解能3.7 Åでのクライオ(極低温)電子顕微鏡構造を報告する。この構造には、TCR–CD3の完全な細胞外ドメインと全ての膜貫通ヘリックスが含まれている。八量体であるTCR–CD3複合体は、TCRαβ:CD3γε:CD3δε:CD3ζζの化学量論比が1:1:1:1となるように組み立てられている。TCR–CD3の細胞外ドメインの組み立てには、TCRαβの定常ドメインと連結ペプチド(connecting peptide)が関わっていて、CD3γε–CD3δεに向かって細胞外ドメインを押し付け、細胞膜に近接した三量体様構造が形成されている。CD3複合体の膜貫通領域はバレル様構造をとっていて、これはCD3ζζの2本の膜貫通ヘリックスと、CD3γεおよびCD3δεの膜貫通ヘリックスとの相互作用によって形成されている。TCRαβの膜貫通ヘリックスがこのバレル様構造へ挿入されるのには、疎水性相互作用とイオン性相互作用の両方が関わっていて、この挿入によりTCR–CD3複合体の膜貫通領域が組み立てられている。まとめると我々のデータは、TCR–CD3複合体組み立ての構造基盤を明らかにしており、TCR活性化(トリガリング)についての手掛かりや、この複合体を標的とする免疫療法を合理的に設計するための基盤を示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度