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がん:Flowerアイソフォームはがんにおける競合的増殖を促す

Nature 572, 7768 doi: 10.1038/s41586-019-1429-3

ヒトでは適応免疫系が細胞間相互作用により外来細胞や損傷した細胞を検出・排除している。しかし、不要な細胞の除去に適応免疫系が常に必要とされるわけではない。例えば、ショウジョウバエ(Drosophila)における細胞選択は、「フィットネスフィンガープリント」に基づいた細胞選択機構を用いている。この機構は、老化を遅らせ、発生における異形成を防ぎ、組織の再生過程で古い組織を置き換えることができる。分子レベルでは、これらのフィットネスフィンガープリントは、Flower膜タンパク質の組み合わせに基づいて成り立っている。適応度の低下を示すタンパク質は、除去されるべき細胞で発現しておりFlower-Loseと呼ばれる。しかし、近隣の細胞もLoseタンパク質を同等のレベルで発現していれば、細胞は殺傷されないため、Flower-Loseアイソフォームが細胞の膜に存在しても、常に除去が誘導されるわけではない。発生や老化の間に損傷しているが生存可能な細胞が蓄積すると、器官の機能不全や疾患が引き起こされるため、適応度の低い細胞を認識する能力は、ヒトにとって有益であるかもしれない。しかし、ショウジョウバエにおいて、前がん細胞はこの細胞競合機構を悪用し、競合的増殖における優位性を獲得する。これは腫瘍の悪性化に関与する可能性があり、ヒトにとって好ましくない。しかし、細胞の適応度を比較するこれと同様の機構がヒトにも存在するのかは不明である。今回我々は、Flower-Loseタンパク質として働く2つのヒトFlowerアイソフォーム(hFWE1とhFWE3)と、Flower-Winタンパク質として働く別の2つのアイソフォーム(hFWE2とhFWE4)について報告する。後者を発現する細胞は、Loseアイソフォームを発現する細胞に対する競合優位性を獲得するが、Lose発現細胞であっても、近隣細胞が同レベルのLoseアイソフォームを発現している場合は除去されない。よってFlowerアイソフォームの発現バランスがフィットネスフィンガープリントとして働いていることが明らかとなった。さらに、ヒトがん細胞ではWinアイソフォームの発現上昇が見られ、Loseを発現する間質組織(がん細胞に競合優位性をもたらす)の存在下で増殖することが分かった。Flowerタンパク質の発現を抑制すると、腫瘍の増殖や転移が低下し、化学療法に対する感受性が増加した。我々の結果は、細胞の認識と選択に関する古い起源を持つ細胞競合機構が、ヒトでも機能しており、発がんと腫瘍の進展に影響を与えることを示している。

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