核物理学:アクチノイドの質量非対称な分裂に及ぼす洋ナシ形分裂片の影響
Nature 564, 7736 doi: 10.1038/s41586-018-0780-0
重い(アクチノイド)核の核分裂では主に、非対称な質量分割が起こる。結合エネルギーをさらに与えて質量非対称な形状にすることのできる量子殻効果がなければ、こうした核は対称的に分裂すると思われる。最も強い殻効果が現れるのは、50個の陽子と82個の中性子を含む球形の「二重魔法」(すなわち、原子番号と中性子数の両方が「魔法」数である)核132Snのような球形の核である。しかし、核分裂の系統的な研究によって、重い分裂片の原子番号がZ = 52からZ = 56の辺りに分布することが示されており、アクチノイドの分裂に影響を及ぼす要因は132Snの強い殻効果のみではないことが示唆されている。Z = 50での強い球形殻効果と、自然界で観測される分裂片のそれとは異なるZの値を両立させることは、長年の難問であった。今回我々では、分裂片の最終的な質量非対称性が、八重極変形(洋ナシ形の変形)が与えるさらなる安定性によっても決まることを示す。この変形は、殻が安定化された八重極変形を示す数少ない核の1つである144Ba(Z = 56)の辺りで、実験的に最近確かめられた。我々は、超流動体分裂ダイナミクスの量子多体モデルを使って、陽子が主に52個から56個の重い分裂片が生成され、これに核分裂への途中で獲得した大きな八重極変形が関連していることを見いだした。こうした非対称分裂が有利になる八重極形状は、Z = 52とZ = 56の変形殻によって生じる。対照的に、球形の魔法核は八重極変形に対して強く抵抗するため、分裂片としての球形の魔法核の生成が妨げられる。今回の知見は、鉛より軽い核の非対称分裂の意外な観測結果を説明できる可能性がある。

