発生生物学:ヒトの胎盤形成における母体と胎児の相互作用のモデルとしての栄養芽層オルガノイド
Nature 564, 7735 doi: 10.1038/s41586-018-0753-3
胎盤は、子宮内での胎児の生育期間を支える胚体外器官である。胎盤の機能不全は深刻な妊娠関連障害につながり、母体にも胎児にも即時的な影響や生涯にわたる影響を及ぼすが、機能的な実験モデルがないため、ヒトの胎盤に関する我々の知識は限られている。胚盤胞の栄養外胚葉は、着床後に速やかに増殖して、胎盤の独特な細胞タイプである栄養芽層を作り出す。in vivoでは、増殖性の絨毛性栄養膜細胞は2つの主な亜集団に分化する。つまり、栄養膜合胞体細胞(栄養交換とホルモン産生を担う多核の絨毛上皮)と絨毛外性栄養膜細胞(胎盤を母体の脱落膜に繋留して、母体のらせん動脈を再構築する)である。今回我々は、栄養芽層の遺伝的に安定な長期培養オルガノイドを作製し、これは栄養膜合胞体細胞と絨毛外性栄養膜細胞の両方に分化できることを報告する。我々は、ヒト白血球抗原(HLA)タイピングを用いて、このオルガノイドが胎児由来であることを確認し、また、それらのアイデンティティーを栄養芽層に特異的な4つの基準に基づいて検証した。培養オルガノイドは絨毛様構造に組織化され、質量分析によって、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、GDF15(growth differentiation factor 15)、PSG(pregnancy-specific glycoprotein)などの胎盤特異的なペプチドやホルモンの分泌が検出された。このオルガノイドは、HLA-G+絨毛外性栄養膜細胞にも分化し、三次元培養中で活発に浸潤した。メチロームの解析からは、このオルガノイドが正常な妊娠第1三半期の胎盤に非常に類似していることが明らかになった。このオルガノイドモデルは、ヒトの胎盤発生の研究や、局所および全身の母体環境と栄養芽層との相互作用の研究に変革をもたらすと考えられる。

