生物物理学:液体から固体へのジャミング転移が脊椎動物の体軸伸長の基盤となる
Nature 561, 7723 doi: 10.1038/s41586-018-0479-2
粘土の成形やガラス吹きの場合と同様に、生体構造を物理的に変形するためには、構成物質は全体としては固体のように機械的な完全性を保ちながら局所的には液体のように流れる必要がある。泡、エマルション、コロイド懸濁液といった無秩序なソフトマテリアルは、ジャミング転移を境に、液体に似た挙動から固体に似た挙動へと切り替わる。同様に、細胞の集合体も、2Dおよび3Dでガラス状の動態を示し、培養上皮の単層でジャミングを起こすことが明らかにされている。これらの挙動は、最近理論的に予測されており、喘息の病理生物学や腫瘍のプログレッションに影響を及ぼすと提唱されている。しかし、一見普遍的と見られるこうした挙動がin vivoでも起きているのか、また特に、これらの挙動が胚の形態形成で何らかの機能的役割を果たすのかどうかについては、ほとんど解明されていない。今回我々は、組織の機械的特性のin vivoでの直接測定と細胞動態の分析とを組み合わせることにより、脊椎動物の体軸伸長において、後部組織が、伸長端である中胚葉前駆帯域での液体様挙動から未分節中胚葉での固体様挙動へのジャミング転移を経ることを示す。降伏応力にはN-カドヘリン依存性の前後方向の勾配が存在し、これによって未分節中胚葉に向かって機械的完全性が次第に高まることが明らかになった。これは、組織がより液体様の泡状構造からより固体様の泡状構造へと転移することと一致する。これらの結果は、細胞スケールの応力の急激な(約1分以内の)変動が、成長端における細胞の再配置と組織の効果的な「融解」を可能にすることを示している。一方、液体様の組織領域における形態形成的な流れは、細胞スケールの応力ではなく超細胞スケールの持続的な(0.5時間以上の)応力によって誘導される。未分節中胚葉の硬化は、後部組織の成熟前の再編成における液体状態を機械的に支えており、これによって一方向的な体軸の伸長が維持される。組織の液体様状態と固体様状態のこうした時空間的な制御は、胚の形態形成の一般的な物理的機構である可能性がある。

