再生:軸索成長促進に必要な要因が完全型の脊髄損傷部を横断する軸索再生を促す
Nature 561, 7723 doi: 10.1038/s41586-018-0467-6
成体では、切断された軸索は、解剖学的に完全な脊髄損傷(SCI)部位を横断して再生することはできない。多様な分子が、発生中や損傷後に軸索成長を部分的に促進したり弱めたりできるが、SCI部の再生不全を効率的に回復させることは、まだできていない。今回我々は、発生中の軸索成長に必須だが成体では減少あるいは消失する3つの要因[(i) ニューロン固有の成長能、(ii) 成長を支持する基質、(iii) 化学誘引]が、成体齧歯類の解剖学的に完全なSCI損傷部位を横断するロバストな軸索再生を促すのに、いずれも個々に必要であり、組み合わせると十分であることを示す。我々は、まずSCI前に、オステオポンチン、インスリン様増殖因子1、毛様体由来神経栄養因子により、成熟した下行性脊髄固有ニューロンの成長能を再活性化した。次に、繊維芽細胞増殖因子2と上皮増殖因子により成長支持基質を誘導した。そして、SCI後に留置したバイオマテリアル・デポ剤から空間的・時間的な制御の下に放出されるグリア細胞由来神経栄養因子により、脊髄固有ニューロンの軸索を化学誘引した。マウスとラットどちらでも、これらの3つの機構を組み合わせて適用すると、アストロサイト瘢痕の境界を通って、非神経組織の損傷中心部を横断するように脊髄固有軸索のロバストな再生が促され、その大きさは対照群の100倍以上だったが、こうした再生はそれぞれの機構単独では起こらなかった。刺激と支持と化学誘引を受けた脊髄固有軸索は、損傷中心部を越えて1つの脊髄分節全体を再生し、損傷を受けていない神経組織の奥にまで進み、シナプスマーカーを発現する神経終末様の接触を形成して、損傷部を横断する電気生理学的伝導能を顕著に回復させた。従って、成熟後に起こった解剖学的に完全なSCI損傷を横断する軸索の再生不全を克服するには、軸索成長を促す、発生に不可欠な複数の機構を組み合わせて順番に再現する必要があった。これらの知見から、完全なSCI損傷に対する、機構に基づいた生物学的修復戦略が明らかになり、この戦略は神経回路のリモデリングが起こった神経回路の機能的回復を増補するために考案されたリハビリテーションモデルとの共用に適している可能性がある。

