Letter
天文学:中高温銀河間物質内でのミッシングバリオンの観測
Nature 558, 7710 doi: 10.1038/s41586-018-0204-1
局所宇宙で観測されたバリオンの数が、ビッグバン時の元素合成から推定される数よりも30~40%ほど少ないということは、数十年前から知られている。これは、宇宙マイクロ波背景放射の密度揺らぎから推定され、宇宙の最初の20億~30億年の間のいわゆる「ライマンαの森」(背景クエーサーの可視光スペクトルに見られる、介在する水素による一連の密なH Iライマンα吸収線)において観測されている。このパラドックスに対する理論的な説明は、ミッシングバリオンが、中高温銀河間物質と呼ばれる、銀河の間を漂う細長いフィラメント状の高温ガスの中にあるというものである。しかし、このガスの圧倒的に多い成分である水素はほとんどが電離しており、標準的なSN比の遠紫外線スペクトルではほとんど見えないため、この場所でバリオンを検出するのは難しい。実際、多大な観測努力にもかかわらず、検出に関してはこれまで不十分な報告が数例あるだけであった。本論文では、0.4より大きな赤方偏移にあるクエーサーのSN比の高いX線スペクトルに、高電離酸素(O VII)の2つの吸収体を観測したことを報告する。これらの吸収体は、2年の時間スケールで変動を示しておらず、付随する低温の吸収もないことから、クエーサー固有のアウトフローか母銀河の星間物質に由来するとする仮定は妥当でない。このO VIIの系は大きな銀河の密度超過(平均の4倍以上)を特徴とする領域にあり、それらの数は(今回のデータの感度しきい値まで)長年探し求められてきた中高温銀河間物質の数値シミュレーション予測とよく一致している。従って我々は、ミッシングバリオンが発見されたと結論する。

