構造生物学:ヒトアセチルCoAカルボキシラーゼ調節の構造基盤
Nature 558, 7710 doi: 10.1038/s41586-018-0201-4
アセチルCoAカルボキシラーゼは、アセチルCoAのATPに依存したカルボキシル化を触媒し、これは脂肪酸生合成の律速段階である。真核生物のアセチルCoAカルボキシラーゼはホモ二量体で、大型の多酵素複合体である。ヒトアセチルCoAカルボキシラーゼには2種類のアイソフォーム、すなわち細胞質中にあって代謝に関わっているACC1と、ミトコンドリア外膜に結合していて脂肪酸のβ酸化を制御するACC2が存在する。ACC1は、リン酸化、アロステリック調節因子の結合およびタンパク質–タンパク質相互作用の複雑な組み合わせによって調節されていて、これがさらにフィラメント形成につながる。このようなフィラメントがin vitroとin vivoで見つかったのは50年前だが、ACC1の多量体化や調節の構造基盤はいまだに解明されていない。今回我々は、ACC1フィラメントに活性型と阻害型という異なる型があることを明らかにする。活性型フィラメントはクエン酸によってアロステリックに誘導され(ACC–クエン酸)、不活性型フィラメントはBRCA1タンパク質(breast cancer type 1 susceptibility protein)のBRCTドメインとの結合から生じる。我々はこれらのクライオ(極低温)電子顕微鏡構造を得た。多量体化していないACC1は非常に動的な構造だが、フィラメント形成が起こると、触媒活性のあるコンホメーション、あるいは触媒活性のないコンホメーションという互いに異なる状態のどちらかへと固定される。ACC1で観察された、大規模なコンホメーション変化を介する酵素調節という独特な機構は、切り替え可能な生合成系の設計に使える可能性がある。アセチルCoAカルボキシラーゼの調節の詳しい解析によって、疾患で見られる脂肪酸生合成の上方調節に対処する新たな道が開けるだろう。

