進化学:70万9000年前以前にさかのぼるフィリピンの既知で最古のヒト族活動記録
Nature 557, 7704 doi: 10.1038/s41586-018-0072-8
60年以上前、フローレス島、スラウェシ島、ルソン島といった東南アジアの島々で石器および大型動物相の遺骸が発見され、これによって当時、ホモ・エレクトス(Homo erectus)がこれらの島々に定住したのは中期更新世であると提唱された。しかし、2003年にフローレス原人(Homo floresiensis)が発見されるまで、ウォーレシアの島々に古代ヒト族が存在したとする主張は、層序学的状況が明らかな地層からのin situ化石や石器が発見されておらず、そうした遺跡の確実な数値的年代測定法が存在していなかったため、仮説にすぎなかった。結果として、これらの主張には概して懐疑の目が向けられていた。本論文で我々は、フィリピン・ルソン島北部にあるカガヤンバレーのカリンガで最近行われた発掘調査の結果を報告する。この調査では57点の石器が出土し、これらはサイ科の絶滅種Rhinoceros philippinensisの関節が分離したほぼ完全な骨格(明らかな解体の痕跡がある)と関連していた他、ステゴドン、フィリピンジカ、淡水ガメ、オオトカゲなどに属すると見られる化石動物相の遺骸も共に発見された。これら全てが発掘された粘土に富む骨層は、電子スピン共鳴法を歯のエナメル質および河成石英に対して用いることで、年代が77万7000~63万1000年前と推定された。この証拠によって、フィリピンにおけるヒト族定住の確実な時期が数十万年さかのぼり、さらには、島嶼部東南アジアでの現生人類以前のヒト族の初期の海外分散が、前期更新世および中期更新世に複数回起きていたことが示唆された。従って、フィリピンは、更新世の大型動物相のみならず古代ヒト族のウォーレシアへの南方移動において中心的な役割を担った可能性がある。

