がん免疫療法:PD-1はT細胞リンパ腫発生のハプロ不全抑制因子である
Nature 552, 7683 doi: 10.1038/nature24649
T細胞非ホジキンリンパ腫は、非常にアグレッシブな悪性腫瘍の不均一なグループで、臨床転帰は不良である。T細胞リンパ腫は末梢T細胞から生じ、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達分子の遺伝的な機能獲得型変異を特徴とすることが多い。このような発がん性変化は、TCR経路を介して慢性的な増殖と細胞生存のプログラムの誘導を促進すると考えられているが、T細胞がこのような事象に対抗できる腫瘍抑制因子を含むかどうかは明らかになっていない。今回我々は、ヒトT細胞リンパ腫のマウスモデルで、リンパ球で急激に起こる強力な発がん性TCRシグナル伝達が、in vivoでリンパ球の強力な増殖を引き起こすことを示す。しかしこの応答は一時的であり、細胞に内在する機構によって強く妨げられる。こうした状況の後にT細胞特異的トランスポゾン変異誘発を用いてゲノム規模のin vivoスクリーニングを行ったところ、抑制性受容体PD-1(programmed death-1)をコードするPDCD1が発がん性T細胞シグナル伝達を抑制するマスター遺伝子であることが分かった。ヒトT細胞リンパ腫では、PDCD1の対立遺伝子の片方、あるいは両方の欠失も頻発していて(30%を超えることがある)、高い臨床的関連性が考えられる。抑制機構としては、PD-1の働きが腫瘍抑制因子PTENのレベルを高め、前がん状態の細胞ではキナーゼであるAKTとPKCによるシグナル伝達が減弱される。対照的に、PD-1のホモもしくはヘテロ接合性欠失は、発がん性刺激後に無制限のT細胞増殖を引き起こし、これがレシピエントに容易に移植可能で、非常にアグレッシブなリンパ腫のin vivoでの迅速な発症につながる。従って、抑制性PD-1受容体はT細胞リンパ腫における強力なハプロ不全腫瘍抑制因子であり、ヒト疾患で変異が頻発していることが分かった。PD-1の生理学的機能としては、抗原誘導性T細胞活性化後の免疫病態の防止が知られているが、これらの知見はさらに新しい機能を付け加えるもので、T細胞リンパ腫治療や、免疫腫瘍学というより広い状況下で見た現在のPD-1標的化戦略に関わってくる。

