天文学:重力波標準音源によるハッブル定数の測定
Nature 551, 7678 doi: 10.1038/nature24471
2017年8月17日、Advanced LIGO検出器とAdvanced Virgo検出器によって、重力波イベントGW170817、すなわち連星中性子星系の合体による強い信号が観測された。LIGOとVirgoによって検出された重力波源の位置と一致する天空の領域内で、合体から2秒以内にγ線バースト(GRB 170817A)が検出された。続いて、この天空の領域が複数の光学天文台によって観測され、銀河NGC 4993から約10秒角以内の領域において過渡的な光信号が確認された。今回の重力波と電磁波の両方によるGW170817の検出は、初の「マルチメッセンジャー」天文観測となる。そうした観測によって、GW170817を「標準音源」として用いた(重力波源までの絶対距離を重力波測定によって直接決定できることを意味する)ハッブル定数の測定が可能になる。ハッブル定数は、宇宙の局所的な膨張率を表しており、宇宙全体のスケールを定め、宇宙論にとって根本的に重要である。今回我々は、重力波信号だけから推定した重力波源までの距離と、電磁波データを用いた赤方偏移の測定から推定した後退速度を組み合わせてハッブル定数を測定したことを報告する。これまでの測定と異なり、今回の測定には宇宙の「距離はしご」を使用する必要がない。つまり、中間的な天文学的距離測定を行わずに、重力波解析を用いて直接宇宙スケールまで光度距離を推定できる。我々は、ハッブル定数を約70 km s−1 Mpc−1と算定した。この値は、既存の測定結果と一致しているが、それらの測定とは全く独立に得られたものである。今後も、重力波源から標準音源測定を行うことで、ハッブル定数を高い精度で絞り込むことが可能になる。

