幹細胞:単一細胞のトランスクリプトミクスが再現する繊維芽細胞から心筋細胞への運命転換
Nature 551, 7678 doi: 10.1038/nature24454
細胞系譜の直接転換は、組織再生や疾患モデル作製の新しい方法につながる。最近、繊維芽細胞をさまざまなタイプの細胞に直接再プログラム化することに成功しているが、繊維芽細胞が次第に標的細胞の運命へと転換する過程で起こる変化は、まだ正確には解明されていない。再プログラム化過程は本来不均一で、非同期的な性質を持つため、大量の細胞を扱うバルクなゲノム技術を使ってこの過程を研究するのは難しい。今回我々は、単一細胞のRNA塩基配列解読法を用いてこの限界を克服し、マウスの繊維芽細胞から誘導心筋細胞(iCM)への再プログラム化の初期段階で起こるトランスクリプトーム全体の変化を解析した。教師なし次元削減とクラスタリングのアルゴリズムを使うことにより、再プログラム化の際に分子的に明確に異なる細胞亜集団が明らかになった。また我々は、iCM形成経路を構築し、細胞増殖とiCM誘導の関係を描き出した。再プログラム化の際の全体的な遺伝子発現変化をさらに解析したところ、意外にもmRNAのプロセシングとスプライシングに関係する因子の発現が低下していることが判明した。中でも第一候補であるスプライシング因子Ptbp1の詳細な機能解析から、繊維芽細胞が心筋細胞特異的なスプライシングパターンを獲得するには、この因子が決定的な障壁となっていることが明らかになった。また、Ptbp1を欠乏させると心臓型トランスクリプトームの獲得が促進し、iCMの再プログラム化効率が上昇した。さらに、これらのデータセットの定量的解析を行ったところ、各再プログラム化因子の発現と個々の細胞の再プログラム化過程の進展との間に強い相関関係があることが判明し、iCMを濃縮するための新しい表面マーカーの発見につながった。まとめると、我々の単一細胞トランスクリプトミクスの手法は、再プログラム化の道筋の再現を可能にし、iCMの誘導について、中間段階の細胞集団、関わる遺伝子経路や調節因子を明らかにできた。

