Article
神経科学:恒常性回路は島皮質の食物手掛かり応答を選択的に制御する
Nature 546, 7660 doi: 10.1038/nature22375
生理的な要求があると、関係する感覚手掛かりに対する認知や注意に偏りが生じる。薬物嗜癖ではこの過程は「乗っ取られて」、手掛かりにより誘発される渇望や再発が起きる。同様に、この機構の調節不全が、ダイエットの失敗や肥満、摂食障害に関与している。ヒトでの神経画像化研究で、こうした現象に島皮質が関係していることが示唆されている。しかし、動機付けに関連した手掛かりの皮質での「認知」表現に、特定の動機付け状態を駆動する皮質下の回路によって偏りが生じる仕組みは分かっていない。今回、微小プリズムを利用した細胞画像化法を開発し、空腹または満腹状態で行動中のマウスの島皮質で、視覚手掛かりに対する応答を観測した。島皮質ニューロンは、食物手掛かりによって応答が偏るが、それは満腹時には消失することが分かった。島皮質には内臓からの複数の満腹関連信号が収束しているが、意外なことに、アグーチ関連ペプチド(AgRP)を発現する視床下部の「空腹ニューロン」を化学遺伝学的に活性化すると、満腹関連信号を無視して島皮質で空腹時様の応答パターンが復活した。回路マッピングと経路特異的な操作により、AgRPニューロンから視床室傍核と扁桃体基底外側部を経て島皮質に至る経路が見つかった。これらの結果から、動機付け関連手掛かりの処理を状態特異的に偏らせる神経基盤が明らかになった。

