構造生物学:抗CRISPRタンパク質によるCRISPR–SpyCas9阻害の構造的基盤
Nature 546, 7658 doi: 10.1038/nature22377
CRISPR–Cas9系は細菌の適応免疫系であり、ファージの感染に対して防御を行う。この系は、Cas9のRNA誘導型エンドヌクレアーゼ活性を介して、PAM(protospacer adjacent motif)およびガイドRNAに相補的な塩基配列によって、二本鎖DNAを分解する。最近、リステリア菌(Listeria monocytogenes)のプロファージから、AcrIIA2とAcrIIA4という2つの抗CRISPRタンパク質が見つかっており、これらはいずれも、細菌およびヒト細胞内で化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のCas9(SpyCas9)およびリステリア菌Cas9の活性を阻害する。しかし、AcrIIA2あるいはAcrIIA4を介したCas9阻害の機構については、まだ分かっていない。今回我々は、単鎖ガイドRNA(sgRNA)およびAcrIIA4と複合体を形成したSpyCas9の結晶構造を報告する。我々のデータは、AcrIIA2とAcrIIA4が、sgRNA依存的な様式でSpyCas9と相互作用することを示している。得られた構造から、AcrIIA4が、PAMを構造的に模倣してPAM相互作用ドメイン内でPAM相互作用部位を占有することで、SpyCas9活性を阻害することが明らかになった。これにより、二本鎖DNA基質のSpyCas9による認識が妨げられる。AcrIIA4はさらに、SpyCas9のRuvC活性部位を遮蔽することで、そのエンドヌクレアーゼ活性を阻害する。構造の比較からは、SpyCas9におけるAcrIIA4結合部位の形成がsgRNAの結合によって誘導されることが明らかになった。我々の研究は、AcrIIA4によるSpyCas9阻害の機構を明らかにしたもので、細胞や組織内で不要なゲノム編集が起きないようにするための、SpyCas9の「オフスイッチ」ツールを開発するための構造基盤を提供している。

