細胞シグナル伝達:TRAF2およびOTUD7BはmTORC2シグナル伝達を調節するユビキチン依存性の切り替えを統御する
Nature 545, 7654 doi: 10.1038/nature22344
mTOR(mechanistic target of rapamycin)は、さまざまな生理的刺激の統合において重要な役割を担っており、これによっていくつかの細胞増殖経路や代謝経路を調節している。mTORは多数の構成要素からなる2つのキナーゼ複合体、mTOR複合体1(mTORC1)とmTORC2の触媒サブユニットとして主に機能し、これらの複合体は構造的に近縁であるが機能的には異なる。mTORシグナル伝達の調節異常は、代謝疾患やがんを含む、ヒトのさまざまな疾患に関連する。従って、mTORC1キナーゼ活性とmTORC2キナーゼ活性はいずれも、細胞内で厳密に制御されている。mTORC1は栄養素と増殖因子の両者により活性化されるが、mTORC2は増殖因子により誘導されるPI3Kシグナル伝達の活性化など、主に細胞外からの合図に応答する。mTORもGβL(別名MLST8)も、mTORC1やmTORC2に組み込まれるが、これら2つの機能的に異なる複合体の動的な組み立てを引き起こすのが何であるのかはほとんど解明されていない。今回我々は、ヒトとマウスにおいて、GβLのK63結合型のポリユビキチン化の状態が、mTORC2の形成と活性化の恒常性を決定することを示す。機構としては、TRAF2 E3ユビキチンリガーゼがGβLのK63結合型のポリユビキチン化を促進し、それによってmTORC2に固有の構成要素SIN1との相互作用が絶たれることで、mTORC1形成に有利に働く。対照的に、OTUD7B脱ユビキチン化酵素はGβLからポリユビキチン鎖を取り除いて、GβLとSIN1との相互作用を促進することで、さまざまな増殖シグナルへの応答においてmTORC2形成を促進する。さらに、K305R/K313R変異あるいは黒色腫に関連したGβL(ΔW297)の短縮によるGβLの重要なユビキチン化残基の喪失は、mTORC2形成の亢進につながり、これは、発がん性のAKTシグナル伝達を活性化することなどによって腫瘍発生を促進する。mTORC2/AKTシグナル伝達の活性化におけるOTUD7Bの生理的に重要な役割を裏付けるように、マウスにおけるOtud7bの遺伝子欠失により、Aktの活性化やKras誘導性の肺腫瘍発生がin vivoで抑制された。総合すると我々の研究は、GβLのユビキチン化依存性の切り替えが、生理的状態でも病的状態でもmTORC2キナーゼの動的な構成および活性化を微調整することを明らかにしている。

