Letter
量子物理学:単一分子イオンの純粋量子状態の生成とコヒーレント操作
Nature 545, 7653 doi: 10.1038/nature22338
原子や原子イオンのレーザー冷却やレーザー捕獲は、エキゾチック物質相の観測、精密なセンサーや最先端の原子時計の開発といった進歩につながった。分子でも同じレベルの制御が実現されれば、化学反応制御、基礎理論の高感度検証など、重要な発展につながる可能性があるが、分子には振動自由度と回転自由度があるため、その量子力学的状態の制御は難題である。今回我々は、2個のイオン種の間で量子情報をマッピングする量子論理分光法を用いて、分子イオンの量子力学的状態を生成し、非破壊的に検出した。我々は、分子を光ポンピングして純粋な初期状態を生成する一般的な手法を開発した。これによって、単一イオン(CaH+)の高分解能スペクトルや、ラビフロッピング、ラムゼーフリンジなどのコヒーレント現象が観測可能になった。今回のプロトコルでは共鳴波長から遠くずらした1本のレーザーが必要だが、分子に特定されるものではないため、分子源を変えることで、多原子種を含む他の多くの分子イオンを同じ装置・同じ手法で扱える可能性がある。さらに、イオントラップの長い監視時間と組み合わせれば、これまでにない制御性と精密さで広範な分子イオンを研究できる可能性がある。従って、今回の手法は、精密分子分光法、基礎物理の厳密な検証、量子コンピューティング、分子ダイナミクスの精密制御などの応用への重要な一歩である。

