神経変性:ポリグルタミン鎖はベクリン1に依存したオートファジーを調節する
Nature 545, 7652 doi: 10.1038/nature22078
ハンチントン病のハンチンチンや脊髄小脳失調症3型のアタキシン3など、さまざまなタンパク質のポリグルタミン(ポリQ)鎖の伸長によって引き起こされる9つの神経変性疾患が知られている。これらのタンパク質中のポリQが長くなるほど疾患の発症年齢が下がるが、その正常な長さにもばらつきがある。これらの疾患ではポリQの伸長が発症を促し、単離したポリQ鎖には毒性があり、選択的スプライシングの結果in vivoで生じたエキソン1からなるハンチンチンのN末端断片も毒性を示す。このような変異タンパク質は凝集しやすいが、可溶型のタンパク質にも毒性がある。多くの正常な細胞質タンパク質にもポリQ鎖があるが、その機能は分かっていない。このようなタンパク質の1つに脱ユビキチン化酵素アタキシン3があり、脳内で広く発現している。今回我々は、野生型のアタキシン3は、そのポリQドメインによってオートファジーの重要な開始因子ベクリン1と相互作用できるようになることを明らかにする。この相互作用により、アタキシン3の脱ユビキチン化酵素活性が働き、ベクリン1をプロテアソームによる分解から保護することで、オートファジーを可能にする。飢餓誘導性オートファジーはベクリン1により制御されるため、アタキシン3の欠乏したヒト細胞株やマウス初代培養ニューロンで特に阻害され、マウスin vivoでも阻害される。アタキシン3の活性やポリQを介したベクリン1との相互作用は、ポリQ鎖を持つ他の可溶性タンパク質とポリQ鎖の長さに依存した様式で競合する。この競合の結果、ハンチンチン遺伝子の変異型エキソン1を発現する細胞では、飢餓誘導性オートファジーが起こらなくなり、このオートファジー阻害は、ハンチントン病のマウスモデルの脳や患者由来の細胞でも再現された。同様の現象は、変異型アタキシン3そのものも含め、他のポリQ病タンパク質でも見られた。これらのデータから、野生型ポリQ鎖の持つ特異的機能が示され、疾患タンパク質ではポリQ伸長変異による競合によりこの機能が損なわれ、このような変異には凝集しやすさとは別の有害作用があることが明らかになった。

