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化学:寿命100 psの配位子から金属への電荷移動フォトルミネッセンスを示す低スピンFe(III)錯体

Nature 543, 7647 doi: 10.1038/nature21430

遷移金属錯体は、光増感剤として用いられる他、発光ダイオードやバイオセンシング、光触媒反応にも使用されている。これらの用途における重要な特徴は、基底状態から電荷移動状態への励起である。高い性能を確保するには、ルテニウムなどの貴金属の錯体によく見られる寿命の長い電荷移動状態が不可欠であることが多い。こうした希少元素を地球に豊富に存在する金属に置き換えることが大きな関心事となっており、鉄や銅は安価で毒性がないため特に魅力的である。しかし、革新的な分子設計が探究されているにもかかわらず、電荷移動励起状態の寿命が長く、しかも地球上に豊富に存在する遷移金属の錯体を実現することは、依然として困難な科学的課題である。室温でフォトルミネッセンスを示すと考えられる鉄錯体は知られておらず、既知の鉄錯体は、励起状態が急速に失活するため光増感剤として使用できない。今回我々は、鉄錯体[Fe(btz)3]3+(btzは3,3′-ジメチル-1,1′-ビス(p-トリル)-4,4′-ビス(1,2,3-トリアゾール-5-イリデン)を表す)を提示し、この錯体では、配位子の優れたσ電子供与性とπ電子受容性によって励起状態が十分安定化し、100ピコ秒(ps)という長い電荷移動寿命と室温フォトルミネッセンスが実現されることを示す。この種は、低スピンFe(III)d5錯体であり、配位子から金属への長寿命の電荷移動二重項(2LMCT)状態から発光が生じるが、こうした2LMCT状態は遷移金属錯体ではほとんど見られない。この錯体では、遷移金属錯体で大きな励起状態エネルギー損失を頻繁に生じさせる項間交差が起こらないため、基底状態へ直接遷移するスピン許容発光の観測が可能になり、表面での光化学反応の大きな駆動力として利用できる可能性がある。今回の実験結果は、適切な設計戦略によって、発光体や光増感剤として使える新しい鉄系材料が得られることを示唆している。

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