微生物学:プロファージWOの遺伝子は、ボルバキアに誘導される細胞質不和合性を再現・促進する
Nature 543, 7644 doi: 10.1038/nature21391
ボルバキア属(Wolbachia)の細菌は母性遺伝する細胞内共生細菌の原型の1つで、世界中の多様な無脊椎動物種の生殖系列に感染する。ボルバキアは、節足動物の性比や生殖戦略を利己的に操作して、感染した母性系列の集団内での比率を増やすことができる。最も一般的な生殖操作は細胞質不和合性であり、感染した雄と非感染の雌との交配において胚致死を引き起こす。同一のボルバキア株が感染した雌では、この胚致死が救済される。この細菌の細胞質不和合性は、40年以上にわたり研究が続けられており、共生生物に誘導される種分化や、アルボウイルスの媒介生物および農業害虫の制御にも関連があるにもかかわらず、その基盤となる遺伝子は依然として不明である。今回我々は、比較解析と遺伝子導入の手法を用いて、ボルバキアのwMel株由来のプロファージWOの真核生物類似モジュールにある転写の異なる2つの共分岐遺伝子が、細胞質不和合性を再現・促進することを示す。これらの2遺伝子を重複発現させたトランスジェニックキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の非感染雄は、非感染雌との交配で胚致死を引き起こした。それぞれの遺伝子は、感染雄と非感染雌との交配において、胚致死性を相加的に上昇させた。胚致死は、野生型の細胞質不和合で見られるものと類似した胚異常と関連しており、全ての例で、wMel株感染胚により顕著に救済された。今回の細胞質不和合性因子遺伝子cifAおよびcifBの発見は、プロファージWOに誘導される生殖操作の遺伝学的研究の先駆けであり、デングウイルスやジカウイルスのヒトへの伝播を制御するためのボルバキアの継続的な使用に対して情報を提供するものである。

