材料科学:超解像ナノスコピー用のアップコンバージョンナノ粒子における増幅された誘導放出
Nature 543, 7644 doi: 10.1038/nature21366
ランタノイドをドープしたガラスや結晶は、3価のランタノイドイオンの準安定エネルギー準位によって、反転分布の形成や、比較的低いポンプパワーでの増幅された誘導放出が容易になるため、レーザー応用に魅力的である。現在では、相、寸法、ドーピングレベルを正確に制御して、ランタノイドをドープしたナノメートルスケールのアップコンバージョンナノ粒子(UCNP)を作製できるようになっている。こうしたUCNPは、近赤外光で励起されると、安定で明るい可視光ルミネセンスを選択可能なさまざまな波長で放出し、単一ナノ粒子感度を持つため、先進的なルミネセンス顕微鏡への応用に適している。本論文では、ツリウムイオン(Tm3+)を高濃度でドープしたUCNPは、980 nmの波長で励起すると、Tm3+の中間準安定3H4準位で反転分布を容易に形成することを示す。すなわち、高いTm3+ドーピング濃度で発光体間距離が小さくなると、強い交差緩和が起こるため、光子アバランシェ(photon-avalanche)型の効果が生じて準安定3H4準位が急速に占有され、単一ナノ粒子内部に3H6基底状態に対する反転分布が形成される。結果として、3H4 → 3H6遷移のアップコンバージョンバンドと一致する808 nmのレーザーを照射すると、これがきっかけとなって、増幅された誘導放出が生じて3H4中間準位を空にできるため、青色ルミネセンスを生成するアップコンバージョン経路を光学的に抑制できる。我々は、このような特性を利用して、低パワーの超解像誘導放出抑制(STED)顕微鏡を実現し、ナノメートルスケールの光学的分解能(ナノスコピー)を達成して、単一UCNPを画像化した。その分解能は28 nmであり、波長の36分の1に相当する。この設計されたナノ結晶によって、誘導放出抑制顕微鏡で現在用いられている蛍光プローブの結晶より2桁低い飽和強度が得られることから、こうした技術によって実際に達成できる分解能を主に制限している平方根則を緩和する新しい方法が示唆される。

