材料科学:非生物的な歯エナメル質
Nature 543, 7643 doi: 10.1038/nature21410
歯のエナメル質は、平行に並んだマイクロスケールやナノスケールのセラミック性の円柱や角柱と柔らかいタンパク質マトリックスが組み合わさった構造をしている。この構造モチーフは、全地質年代の全ての種で異常なまでに共通している。こうした不変性は、特に他の組織の多様性と対比すると、機能本位の基礎構造が存在することを示唆している。今回我々は、酸化亜鉛ナノワイヤーカーペットを成長させた後、これにポリマーマトリックスを染み込ませるように堆積させる操作を一層ずつ順次繰り返すことによって、歯のエナメル質から着想を得た柱状のナノ複合材料をex vivoで複製した。我々は、このナノ複合材料は歯のエナメル質よりも硬質相の含有量が少ないにもかかわらず、その機械的特性が、硬度を含めたエナメル質の機械的特性に匹敵することを示す。今回の非生物的エナメル質の粘弾性性能指数(VFOM)と重み調整VFOMは、天然の歯のエナメル質と同等以上であり、それぞれ、従来の材料の限界値である0.6と0.8を超える値を達成している。VFOM値は振動損傷に対する耐性を表しており、今回の柱状複合材料は、生体模倣設計を使えば、衝撃、環境振動、振動応力に起因する構造損傷に対して非常に高い耐性を持つ軽量材料を作製できることを実証している。今回の一層ずつ積層させた複合材料では、これまで実現できなかった高剛性、減衰、軽量の組み合わせが実現されており、こうした性能は、有機相の界面部における高効率のエネルギー散逸に起因している。この界面部が歯の法線方向の巨視的変形に及ぼす寄与は、in vivoでは、構造が柱状のとき最大になる。これは、生存種のエナメル質における柱状モチーフが進化上の利点であることを示唆している。我々は、今回の知見が全ての柱状複合材料に適用され、高性能耐荷重材料の開発につながると予想する。

