生化学:EPRSはmTORC1–S6K1の重要なエフェクターでありマウスの脂肪症に影響を及ぼす
Nature 542, 7641 doi: 10.1038/nature21380
脂肪症や老化に寄与する代謝経路は、mTORC1(mammalian target of rapamycin complex 1)–S6K1(p70 ribosomal protein S6 kinase 1)軸によって活性化される。しかし、mTORC1–S6K1の既知の標的では、観察される機能喪失表現型を説明できないことから、この経路には下流のエフェクターがさらに存在すると考えられている。今回我々は、グルタミル-プロリルtRNA合成酵素(EPRS)が、脂肪症および老化に寄与するmTORC1–S6K1の標的であることを明らかにする。mTORC1–S6K1によるEPRSの999番目のセリンのリン酸化により、アミノアシルtRNA合成多酵素複合体からのEPRSの解離が誘導され、これが、タンパク質合成の域を越えてEPRSが非カノニカルな機能を実行するのに必要である。EPRSのリン酸化の生理的な機能を調べるために、リン酸化が起こらないS999A(999番目のセリンをアラニンに置換)およびリン酸化を模倣したS999D(999番目のセリンをアスパラギン酸に置換)の変異を持つEprsのノックインマウスを作製した。S999Aをホモ接合で持つマウスは、S6K1欠損マウスやmTORC1の構成因子であるraptorを脂肪細胞特異的に欠損したマウスと同様に、低体重、脂肪組織量の減少および寿命の延長を示した。S6K1欠損マウスにおいてEprsS999D対立遺伝子の置換を行うと、体重や低脂肪状態が正常化されたことから、EPRSのリン酸化はS6K1依存的な代謝応答を仲介することが示された。脂肪細胞では、インスリンがS6K1依存的なEPRSのリン酸化と、合成多酵素複合体からの解離を促進した。相互作用スクリーニングから、リン酸化EPRSがSLC27A1(脂肪酸輸送タンパク質1;FATP1)に結合して、その細胞膜への移行と長鎖脂肪酸の取り込みを誘導することが明らかになった。従って、EPRSとFATP1は代謝表現型に重要な、mTORC1–S6K1軸の最終的なエフェクターである。

