神経科学:線虫のニューロンは神経毒性ストレス下においてタンパク質凝集体とミトコンドリアを細胞外へ捨てる
Nature 542, 7641 doi: 10.1038/nature21362
誤って折りたたまれたタンパク質の毒性とミトコンドリアの機能障害は、加齢に伴う機能的なニューロンの減少や神経変性疾患を促進する重要な要因である。そのためニューロンは、タンパク質の恒常性とミトコンドリアの品質を維持するために、かなりの細胞資源をシャペロン、タンパク質分解、オートファジー、マイトファジーにつぎ込んでいる。神経保護作用という課題を複雑にしているのは、誤って折りたたまれたヒトの病原性タンパク質やミトコンドリアが、未知の機構により周囲の細胞へと移動でき、病変を周りに広げる可能性があるということである。今回我々は、線虫の一種Caenorhabditis elegansの成体ニューロンから、膜に囲まれたエキソファー(exopher)と呼ばれる大型(約4 μm)の小胞(タンパク質の凝集体や細胞小器官を含むことがある)が放出されることを明らかにする。ミトコンドリアの品質低下に加えて、シャペロンの発現やオートファジー、プロテアソームを阻害すると、エキソファーの産生が促進される。タンパク質毒性ストレスを受けてエキソファーを産生したニューロンは、同様なストレスがかかってもエキソファーを産生しなかったニューロンに比べて、その後に機能が改善した。放出されたエキソファーは周囲の組織を通過し、内容物の一部はそこで分解されるようだが、分解できない一部の物質はもっと離れた細胞で見つかることもあり、二次的な放出があることが示唆される。我々の観察結果は、エキソファーの産生が、タンパク質恒常性や細胞小器官の機能に負荷がかかったときに、細胞から神経毒性物質を排除するために起こる潜在的な応答であることを示唆している。エキソファーは保存された機構の構成要素であり、この機構は、ニューロンのタンパク質恒常性維持やミトコンドリアの品質制御の基本的だがこれまで知られていなかった部分を担っていて、その機能が損なわれたり、加齢によって低下したりすると、ヒトの神経変性疾患の発症や脳の老化に能動的に関わる可能性がある。

