神経科学:プリオンタンパク質はGタンパク質共役受容体Adgrg6の作動性リガンドである
Nature 536, 7617 doi: 10.1038/nature19312
正常プリオンタンパク質(PrPC)の除去は慢性脱髄性多発ニューロパチーにつながり、シュワン細胞に影響が出る。PrPCをニューロン限定的に発現させるとこのニューロパチーの発生が防止されることから、PrPCはシュワン細胞の受容体を介してトランスに作用すると考えられるが、この受容体はまだ明らかにされていない。今回我々は、PrPC欠失マウスの坐骨神経ではcAMP濃度が低下していることを明らかにする。これは、PrPCがGタンパク質共役受容体(GPCR)を介して作用することを示唆している。PrPCのアミノ末端の柔軟な尾部(残基23–120)は、初代培養シュワン細胞、シュワン細胞株SW10、GPCRのAdgrg6(別名Gpr126)を過剰発現させたHEK293T細胞で、濃度依存的にcAMPの増加を引き起こした。これとは対照的に、未処理のHEK293T細胞や、他のいくつかのGPCRを発現させたHEK293T細胞は柔軟な尾部に反応せず、またSW10細胞からGpr126を除去すると柔軟な尾部に誘発されるcAMP応答が起こらなくなった。PrPCの柔軟な尾部には、Gpr126のアゴニストであるIV型コラーゲンのGPRGKPGモチーフに似たポリ陽イオン性クラスター(KKRPKPG)が含まれる。PrPC由来のKKRPKPG含有ペプチド(FT23–50)はそれだけで、細胞やマウスでGpr126依存性のcAMP応答を引き起こし、またゼブラフィッシュ(Danio rerio)のgpr126ハイポモルフ変異体ではミエリン形成を改善した。陽イオン性アミノ酸残基をアラニンで置換すると、FT23–50の生物活性も、これと同等なIV型コラーゲンペプチドの活性も失われた。これらから、PrPCはその柔軟な尾部を介してGpr126受容体を活性化することにより、ミエリンの恒常性維持に働いていると考えられる。これらの結果は、PrPCの生理的役割を明らかにしたのに加えて、広く見られる消耗性疾患で治療の選択肢が限られている脱髄性多発ニューロパチーの病因にも関わっている。

