量子情報:超伝導回路で誤り訂正を使った量子ビット寿命の延長
Nature 536, 7617 doi: 10.1038/nature18949
量子誤り訂正(QEC)は、量子ビットに発生するエラー取り除くことができるため、将来の量子コンピューターに不可欠な要素である。QECを実行するには、対称性を注意深く調整した量子状態を用いて、量子ビットを高次元空間で冗長的に符号化する。こうしたパリティ型オブザーバブルの射影測定からエラーシンドロームの情報がもたらされ、この情報を用いて誤りを簡単な演算で訂正できる。しかし、量子ビットの寿命がシステム構成要素の寿命よりも長くなる、QECの「損益分岐点(‘break‐even’ point)」にはまだ手が届いていない。これまでの研究では、QECの要素は実証されてきたが、QECシステムが量子ビットを長時間保つ能力よりも、主にQECコードの特徴やスケーリング特性が示されてきた。今回我々は、量子ビットのエネルギー損失に起因する自然な誤りを抑制することで、損益分岐点に到達するQECシステムを実証する。この量子ビットは、超伝導共振器のシュレーディンガー猫状態の重ね合わせに、論理的に符号化した。我々は、符号化、自然発生エラーの監視、復号化、訂正を行う実時間フィードバックを用いて、完全なQECプロトコルを実行した。どのような事後選択も行わず、完全なプロセストモグラフィーで計測した結果、誤り訂正された量子ビットの寿命は320マイクロ秒であった。これは、システムのどの構成要素の寿命よりも長い。すなわち、トランズモンの寿命より20倍以上長く、誤り訂正なしの論理符号化の寿命より約2.2倍長く、さらに最良の物理量子ビット(共振器の|0〉fと |1〉fのフォック状態)の寿命より約1.1倍長い。今回の結果は、従来のQEC方式ではなく、ハードウエア効率の良い量子ビット符号化を使う利点を示している。今回の結果はさらに、実験的誤り訂正の研究分野を、基本概念の検証から、システム性能を決める測定基準や誤り耐性システムを実現するという課題の探究へと前進させる。

