神経科学:睡眠恒常性スイッチの作動機構
Nature 536, 7616 doi: 10.1038/nature19055
動物は、睡眠によって外界から遮断されるため、そのリスクとコストは何か死活的な利益で相殺されてなくてはならない。このまだ解明されていない利益に関する手掛かりは、睡眠の恒常性の理解から得られるだろう。睡眠の必要度を監視するためには、生体内の記録器が、睡眠の中心的機能と結び付いた生理的な変化を追跡しているはずだからである。ショウジョウバエ(Drosophila)では、睡眠恒常性装置の重要要素の1つは、中心複合体の背側扇状体(dFB)に投射している一群のニューロンである。このニューロン群を人為的に活動させると睡眠が誘発され、興奮性を減少させると不眠になる。睡眠遮断を行ったハエのdFBニューロンは電気的活動が高まり、入力抵抗が増して膜時定数が長くなる傾向があるが、休息中のハエのニューロンは電気的に不活性になる傾向がある。従って、相関的な証拠から、恒常性睡眠制御は、睡眠促進ニューロンを活性状態と静止状態の間で切り替えることによって行われているという単純な考え方が裏付けられる。今回我々は、dFBニューロンが状態の切り替えを行っていることを実証し、この切り替えを操作している神経調節物質がドーパミンであることを明らかにし、その機構を詳細に示す。覚醒に働くドーパミンは、数十ミリ秒以内にdFBニューロンに一過的な過分極を引き起こし、その後数分間興奮抑制が続いた。どちらの作用もDop1R2受容体により変換され、カリウムコンダクタンスによって仲介されていた。電気的不活性状態への切り替えは、ShakerとShabによる電位依存性Aタイプ電流の下方調節と、今回我々がSandmanと名付けた2孔型ドメインカリウムチャネルを通る電位非依存性漏洩電流の上方調節によるものだった。Sandman はCG8713遺伝子によってコードされ、ドーパミンに応答して細胞膜に移行する。Shakerの発現をdFB限定的に抑制すると、オン状態にあるdFBニューロンの連続発火が遅くなることにより睡眠は減り、Sandmanを抑制すると、dFBニューロンがオフ状態に入るのを阻害することにより睡眠は増えた。従って、限られた数のニューロンの生物物理学的変化が睡眠–覚醒状態の制御と関連していることが分かった。

