タンパク質折りたたみ:ミトコンドリアでの異常タンパク質応答はマトリックスのRNA前駆体プロセシングと翻訳を制御する
Nature 534, 7609 doi: 10.1038/nature18302
ミトコンドリアマトリックスは、核ゲノムとミトコンドリアゲノムに由来するタンパク質の折りたたみや組み立てを共存させなければならないという点で独特である。線虫の一種のCaenorhabditis elegansでは、ミトコンドリアでの異常タンパク質応答(mitochondrial unfolded protein response;UPRmt)がマトリックスにあるタンパク質の高次構造異常を感知して、ミトコンドリアのシャペロニンなどの核遺伝子の発現プログラムを誘導し、ミトコンドリアでのタンパク質恒常性維持を助けることが知られている。哺乳類細胞ではミトコンドリアマトリックスに局在するオルニチントランスカルバミラーゼの折りたたみ異常がシャペロニン発現を誘導することが知られているが、哺乳類のUPRmtの解明はまだ初期の段階であり、それはUPRmt活性化を急性誘導する因子が分かっていないためである。こうした制限があることで、マトリックスタンパク質の高次構造異常に対する細胞応答や、異常タンパク質による負荷を制御するためにUPRmtがミトコンドリアでの翻訳に及ぼす影響の解析は行われていない。今回我々は、マトリックスに局在するHSP90/TRAP1、あるいはLONプロテアーゼの薬理学的阻害剤(シャペロニン発現を促進する)と、全体的な転写解析およびプロテオーム解析を組み合わせて用い、ヒト細胞のUPRmtに対する広範にわたる迅速な応答を明らかにする。この応答では、核遺伝子の広範な誘導が起こり、その中にはタンパク質の折りたたみ、RNA前駆体プロセシングや翻訳に関わるマトリックス局在タンパク質などが含まれている。機能に関する研究から、ミトコンドリアでは迅速だが可逆的な翻訳抑制が、RNA前駆体プロセシングの低下と同時に起こることが明らかになった。このプロセシング低下は、ミトコンドリアでRNA前駆体プロセシングを行うヌクレアーゼのMRPP3の転写抑制およびLON依存性の代謝回転によって引き起こされる。今回の研究は、ミトコンドリアでは急性の異常タンパク質ストレスが、ミトコンドリアマトリックス内のシャペロンを増加させるとともに、翻訳抑制を介してマトリックス局在タンパク質の合成を低下させることを明らかにしており、哺乳類のUPRmtのさらなる解明を進めるための枠組みを提供している。

