微生物学:バクテリオファージφ29の尾部には、細胞膜を貫通するための小孔形成ループが存在する
Nature 534, 7608 doi: 10.1038/nature18017
バクテリオファージのほとんどは尾部を持ち、収縮性あるいは非収縮性の長い尾部、もしくは非収縮性の短い尾部に、等軸の多面体、あるいはそれを引き延ばした長型の頭部が結合している。尾部は複雑な機械であって、宿主細胞の認識と宿主細胞への付着、細胞壁と細胞膜の貫通、ウイルスゲノムの放出に中心的役割を果たす。しかし、内側にある宿主細胞膜を尾部が貫通する仕組みはよく分かっていない。今回我々は、バクテリオファージφ29の尾部にあるノブタンパク質gp9(gene product 9)の構造と機能について報告する。gp9の分解能2.0 Åでの結晶構造から、6個のgp9分子が六量体となって管構造を形成し、そこには6本の柔軟な疎水性ループがあって、DNAが放出されるまで管の一端をふさいでいることが分かった。塩基配列と構造の解析から、管にあるループは膜に作用している可能性が示唆された。さらに生化学的分析と電子顕微鏡による構造解析を行ったところ、管にある6本の疎水性ループがDNAの放出と同時に外に出て、膜の脂質二重層を貫通するチャネルを形成し、これによってバクテリオファージのゲノムDNAの放出が可能になることが示された。これは、細胞膜の貫通に、エンベロープを持たない真核生物ウイルスの一部とよく似た小孔形成機構が関わっていることを示唆している。他のファージの尾部タンパク質を調べて同様な疎水性ループが見つかったことから、原核生物ウイルスによる細胞膜の貫通に共通の機構が使われている可能性が考えられる。原核生物ウイルスと真核生物ウイルスの感染機構は著しく異なるように見えるが、細胞膜を突破するために同じような機構を進化させてきたことを、今回の知見は示唆している。

