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化学生物学:鉄の代わりに貴金属を含有する人工ヘムタンパク質による非生物触媒反応

Nature 534, 7608 doi: 10.1038/nature17968

金属イオンを含有する酵素、すなわち金属酵素は、遷移金属中心の反応性を示すとともに、分子進化して系の反応性と基質選択性を変える可能性を有する。最近、基質特異性の寛容さとタンパク質工学を利用することによって、天然金属酵素に触媒される反応の範囲が広げられ、非生物変換も含まれるようになった。しかし、この手法は、天然金属酵素の金属中心に固有の反応性によって制限される。この制限を克服するため、天然金属部位が欠けたタンパク質内に完全な貴金属錯体を組み込むことによって、人工金属タンパク質が作られるようになった。しかし、こうした系では組み込んだ金属錯体が基質結合部位を占有してしまうため、人工金属タンパク質と基質の相互作用は、天然タンパク質の場合と異なる。これらの2つの手法の間に第3の手法がある。第3の手法では、金属酵素の天然金属が、天然タンパク質の金属とは異なる反応性を示す非生物金属で置き換えられる。この手法なら、定方向進化し得る酵素の天然基質結合部位の中で非生物触媒反応を行うための人工酵素を作製できる可能性がある。今回我々は、FeポルフィリンIX(Fe-PIX)タンパク質中の鉄を非生物貴金属で形式的に置き換え、天然Fe酵素などの金属酵素では触媒されない反応を触媒する酵素を作製したことを報告する。具体的には、Ir(Me)部位を持つ改変ミオグロビンを作製した。この改変ミオグロビンは、カルベン挿入によるC–H結合の官能基化を触媒してC–C結合を形成する他、β置換ビニルアレーンと活性化されていない脂肪族αオレフィンの両方にカルベンを付加する。我々は、Ir(Me)ミオグロビンを定方向進化させ、C–H挿入生成物の片方のエナンチオマーを形成する他、活性化されていないオレフィンのエナンチオ選択的かつジアステレオ選択的なシクロプロパン化を触媒する変異体を生成した。今回報告した非生物金属ポルフィリンを含有する人工ヘムタンパク質の作製方法は、PIXタンパク質骨格と非天然金属補因子の無数の組み合わせから、さまざまな非生物変換を触媒する人工酵素を作製するための土台を築くものである。

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