がん:膵臓腺がんの画像を利用した検出と抵抗性に対抗する治療標的
Nature 534, 7607 doi: 10.1038/nature17988
膵臓の上皮内新生物は、膵管腺がんに進行する可能性のある前がん病変である。膵管腺がんは致死率の高いがんで、進行した段階になってから臨床症状が現れ、薬剤に強力な抵抗性を示すという特徴がある。膵臓がんに見られることの多いゲノム変化に、KRAS2の活性化、およびp53とSMAD4の不活化がある。しかし今のところ、これらの経路を治療の標的にするのは非常に難しいため、膵臓がんの増殖のカギとなる別の因子を探す試みも重要となっている。今回我々は、幹細胞の運命決定因子Musashi(Msi)が膵臓がんの進行に不可欠であることを、膵臓がんの遺伝的モデルと患者由来の異種移植片の両方で明らかにした。具体的には、がん内部の幹細胞シグナルを画像によって追跡できるMsiレポーターマウスを開発し、膵臓の上皮内新生物が腺がんへと進行するにつれてMsiの発現が上昇すること、そしてMsiを発現する細胞が膵臓がんの重要なドライバーであることを明らかにした。すなわち、Msi発現細胞は膵臓がんの増殖能を主に担っていて、循環腫瘍細胞中に多く存在しており、薬剤抵抗性も著しく高い。この集団は効果的な治療標的となり、Msi1あるいはMsi2を欠失させることによって、膵臓の上皮内新生物から腺がんへの進行が著しく抑制され、全生存率が改善した。患者由来の原発性の腫瘍でもMsiを阻害すると増殖が止まったことから、このシグナルがヒトのがんに必要なことが示唆される。これらの知見が臨床にも応用できるかを探るため、Msiに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製したところ、腫瘍への浸透、取り込み、標的阻害が確実に起こり、膵臓がんの増殖を効率よく抑制した。これらの結果から、Msiレポーターは治療抵抗性を同定するための優れた手段となることが分かり、Msiシグナル伝達が膵臓がんの重要な調節因子であることが明らかになった。

