微生物学:環境中のブレヴィアータ綱生物には表在生物である相利共生菌Arcobacterが共生している
Nature 534, 7606 doi: 10.1038/nature18297
ブレヴィアータ綱は、自由生活する単細胞の原生生物の一系統で、動物や菌類とは遠い類縁関係にある。ブレヴィアータ綱は約10億年前に出現したが、当時は海洋の酸素含有量が低かった。現存するブレヴィアータ綱は嫌気的な生活様式を持つが、これが進化によるものなのか、あるいは維持してきたものなのかは不明である。本論文では、新しく発見されたブレヴィアータ綱の生物Lenisia limosa, gen. et sp. nov.の培養について報告する。これには、動物に見られるArcobacter属の近縁種が定着している。生理学実験により、L. limosaとArcobacterの関係は、水素の伝達を原動力とする相利共生(共生関係にある双方が利益を得る)であることが分かった。ゲノム規模の塩基配列解読とディファレンシャルプロテオミクスにより、実験的に観察されたL. limosaの適応度上昇は、これまで知られていない種類のNAD(P)Hを基質とするヒドロゲナーゼの活性で説明できると考えられることが分かった。この酵素はArcobacterが存在すると発現するが、存在しない場合は発現しない。ディファレンシャルプロテオミクスからはさらに、Lenisiaが存在すると、Arcobacterによる既知の「毒性」因子の発現が促進されることも明らかになった。これらのタンパク質は通常、Arcobacterの動物細胞への感染の際に定着を可能にするように働くが、今回の例では相利的に働くらしい。また、現在得られているL. limosa以外の2種類のブレヴィアータ綱生物のトランスクリプトームデータの再解析から、水素を消費する近縁のArcobacterの存在と活性が明らかになり、この2つの微生物群の間の相利共生関係は広く見られる可能性が示された。この結果は、今回のArcobacterとブレヴィアータ綱の例によって示されたように、毒性に関わる分子機構が相利共生にも役立つ説を裏付けている。

