Letter
再生医療:ヒルシュスプルング病の細胞治療や創薬のためのヒトENS細胞系譜の誘導
Nature 531, 7592 doi: 10.1038/nature16951
腸神経系(ENS)は、自律神経系の最も大きな構成要素で、ニューロンの数は脊髄に存在するものよりも多い。ENSは、その自律性、神経伝達物質が極めて多様であること、そして複雑な細胞構成により「第二の脳」と呼ばれてきた。ENSの発達異常はヒルシュスプルング病(HSCR)など、多くのヒト疾患の原因となっている。HSCRは、消化管、特に遠位結腸へ移動するENS前駆細胞の発達不全によって引き起こされる。ヒトENSの発達は簡単に利用できるモデル系がないためほとんど解明されていない。今回我々は、ヒトの多能性幹(PS)細胞から効率的にENS前駆細胞を誘導して単離し、さらにそれらを機能する腸ニューロンに分化させたことを示す。in vitroで誘導されたENS前駆細胞は、発生中のニワトリ胚で標的部位へと移動させることができ、成体マウスの結腸では広い範囲にわたって定着させることができた。ヒトPS細胞由来ENS前駆細胞をin vivoで生着、移動させると、HSCRマウス(Ednrbs-l/s-l)の疾患に関連する死が救済されるが、作用機構は分かっていない。さらに、EDNRBヌル変異を有するENS前駆細胞によりHSCR関連の移動異常をモデル化することができ、ペプスタチンAが治療標的候補の1つとなることが分かった。我々の研究により、ヒトENSの発達を研究するための、ヒトPS細胞を基盤とするプラットフォームが、我々が知るかぎり初めて確立され、細胞や薬剤を基盤とするHSCRの治療戦略が示された。

