X線結晶学:不完全結晶を用いた巨大分子の回折イメージング
Nature 530, 7589 doi: 10.1038/nature16949
巨大分子やその複合体の三次元構造は、主としてタンパク質X線結晶構造解析法によって決定される。この方法の主な制約は、高品質の結晶を入手することである。高品質結晶は、X線回折を十分大きな散乱角まで広げ、結晶構造を解明できるほど高い分解能の情報を得るのに必要である。単位胞体積の小さい結晶や巨大分子が密に詰まった結晶の方が高い分解能のブラッグピークをもたらすことが多いという観察結果は、一部の巨大分子の結晶構造解析の分解能が、結晶の不均一性ではなく、結晶格子の厳密な位置秩序からのずれによって制限されている可能性があることを示唆している。そうした理想格子からの分子のずれに起因して連続回折パターンが得られるが、このパターンは、数種の別個の結晶方位で配列した個々の剛体分子複合体の回折のインコヒーレント和に等しいため、結果としてブラッグピーク単独よりも多くの情報を含んでいる。そうした連続回折パターンは昔から観察されており、タンパク質ダイナミクスに関する情報源として興味深いが、構造決定には用いられていなかった。今回我々は、膜内在性タンパク質複合体である光化学系IIの結晶について、格子の乱れによって情報量が増え、回折パターンの分解能が4.5 Åという観察可能なブラッグピークの限界をはるかに超えて向上するため、パターンの位相を直接回復できることを示す。我々は、制約条件として4.5 Åで従来法によって決定された分子エンベロープを用いて、3.5 Åの分解能で光化学系II二量体の静止像を得た。この結果は、連続回折が、よく見られる不完全結晶を利用するとともにモデルによらない位相回復を可能にする手法を用いることで、長い間考えられていた巨大分子の結晶構造解析の分解能限界の克服に用いることができるのを示している。

