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免疫学:輸送体TAPの低温電子顕微鏡解析により明らかになったウイルスの免疫回避機構

Nature 529, 7587 doi: 10.1038/nature16506

ウイルス感染や腫瘍細胞に対する細胞性免疫は、主要組織適合性複合体クラスI(MHC I)分子による抗原提示に依存している。細胞内の抗原性ペプチドはTAP(transporter associated with antigen processing)によって小胞体へと輸送され、次いで新生MHC I分子に結合し、これが細胞表面へと運び出されて、ペプチドを免疫系に提示する。細胞傷害性Tリンパ球は非自己ペプチドを認識し、感染細胞や悪性細胞がアポトーシスを起こすように仕向ける。TAPに欠陥があると、免疫不全や腫瘍発生の原因になる。一部のウイルスは免疫系の監視から逃れるための戦略を進化させて、TAPの発現を低下させたり、TAP活性を直接阻害したりしている。しかしこれまでのところ、TAPの構成やウイルスによる阻害の機構は、構造レベルでは解明されていない。本論文では、ヒトTAPが、単純ヘルペスウイルス1型が産生する小型のタンパク質である阻害物質のICP47と複合体を形成した状態の低温電子顕微鏡構造を報告する。TAP輸送体の12本の膜貫通ヘリックスと2個の細胞質ゾル側ヌクレオチド結合ドメインは内向きのコンホメーションを採っていて、2個のヌクレオチド結合ドメインは分離している。ウイルス性阻害物質であるICP47は長いらせんからなるヘアピン構造を作り、これがTAPのペプチド移動通路を細胞質側からふさいでいる。ICP47の結合によって基質の結合が妨げられ、ATP加水分解に必要なヌクレオチド結合ドメインの閉鎖が妨害される。今回の研究は、持続性ウイルスによる免疫回避の注目すべき例を明らかにしている。単純ヘルペスウイルスは、ウイルス抗原が小胞体に取り込まれるのを妨害することによって細胞傷害性Tリンパ球に見つからないようにしており、このことが宿主体内で一生にわたって感染し続けられる一因なのかもしれない。

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