量子物理学:エンタングル原子を用いた量子射影限界を100倍下回る低雑音計測
Nature 529, 7587 doi: 10.1038/nature16176
量子計測では、エンタングルメント、すなわち微視系に特有の相関を使うことで、物理測定の統計精度を改善できる。光ビームや原子状態の位相シフトなどの信号を測定する際、達成可能な精度の顕著な限界は、無相関のプローブ粒子の計数に伴う雑音から生じる。この雑音は、一般にショット雑音あるいは射影雑音と呼ばれ、ここから位相分解能の標準量子限界(SQL)が生じる。しかし、これらプローブ粒子をエンタングルさせることで、ハイゼンベルク限界まで雑音を軽減できる。さまざまな物理系で実験的進展が見られるにもかかわらず、こうした方法で、最適化した従来型の(エンタングルしていない)系に引けをとらない性能が実現できるかどうかは根強く残る疑問である。今回我々は、「時計」状態にある50万個の87Rb原子を使って、これまでにないレベルの計測精度の向上を実現する方法を実証する。この原子集団は、光共振器を使った測定によって20.1 ± 0.3 dB(100倍)スピンスクイーズされている。我々はマイクロ波誘起の小さな回転を、SQLより18.5 ± 0.3 dB(70倍)高く直接分解した。この装置によって実現された147マイクロラジアンというシングルショット位相分解能は、これまで最もよく設計された冷却原子センサーより、原子数が少ないにもかかわらず優れている。この原子集団では680 ± 35個以上の粒子がエンタングルしていると推測される。応用には、原子時計、慣性センサー、一般相対論の検証や電子の電気双極子モーメントの探索などの基礎的な物理実験が含まれる。我々はこの目的を達成するために原子時計の測定を行い、マイクロ波源の位相雑音に制限される10.5 ± 0.3 dB(11倍)の量子的な増強効果を実証した。

