画像化法:小角散乱テンソルトモグラフィーによる巨視的試料のナノ構造の調査
Nature 527, 7578 doi: 10.1038/nature16056
多くの物質の機械的特性は、物質内部のナノ構造の巨視的な配列と配向に基づいている。このナノ構造は、さまざまな長さスケールにわたって秩序化し得る。生物学では、階層的秩序化の原理を利用して、重量とエネルギーコストを最小に抑えながら、強度やロバストネスなどの機能性が最大化されることが多い。ナノスケールイメージング法は、超微細構造(小さ過ぎて光学顕微鏡でイメージングできないナノスケール構造)を直接視覚化できるが、視野が制限されてしまうため、巨視的試料の超微細構造の変化に関する相関研究を十分に行うことは容易でない。超微細構造の秩序化を調べるその他の方法、例えばX線小角散乱法や中性子小角散乱法などは、巨視的試料に適用できる。しかし、こうした散乱法の適用は、二次元試料や等方的に配向した超微細構造に限定されている。こうした制約があるため、自然界や材料科学分野に豊富に存在する複雑な配向パターンを持つナノ構造の研究には、小角散乱法はあまり利用されていない。今回我々は、小角散乱法とテンソルトモグラフィーを組み合わせて、非破壊的に巨視的な三次元試料のナノスケール構造を調べるイメージング法について報告する。我々は、ヒト海綿骨試料におけるナノスケールの石灰化コラーゲン細繊維の主な配向と配向度を25 μmの空間分解能で測定することによって、この方法を実証した。骨の石灰化コラーゲン細繊維によく見られる円筒対称性などの試料内の対称性を利用することで、サンプリング条件が扱いやすくなり、数値計算が効率化される。小角散乱テンソルトモグラフィーは、生物試料にも材料科学試料にも適用でき、スマート材料やバイオインスパイアード材料の理解と特性評価に役立つ可能性がある。さらに、この方法は非破壊的なのでin situでの測定に適しており、例えば生物組織や既製材料の機械的応答における超微細構造の役割が研究できるようになる。

