遺伝子工学:CRISPR-Cas9によるDNA標的切断のコンホメーション変化による制御
Nature 527, 7576 doi: 10.1038/nature15544
Cas9はRNAをガイドとして使うDNAエンドヌクレアーゼで、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)を介して働く細菌の適応免疫系の一部であり、外来DNAを標的として破壊する。Cas9は、一本鎖ガイドRNAと組み合わせると、動植物のゲノムを改変する強力な手段にもなり、治療への将来の適用を目指してDNA標的化の効率や特異性を高めるための努力が続けられている。オフターゲット作用の研究により、DNAとの結合はDNA切断よりもはるかに特異性が低いことが分かっているが、DNA鎖切断を決定する分子レベルの合図がどういうものなのかはまだ解明されていない。今回我々は、Cas9のHNHヌクレアーゼドメインのコンホメーションが、DNA切断活性を直接的に制御していることを示す。分子内フェルスター共鳴エネルギー移動実験によって、オンターゲットDNA配列やオフターゲットDNA配列と結合している状態のCas9触媒ドメインの相対的な配向を調べたところ、DNA切断の有効性とHNHドメインが活性型コンホメーションを採っている割合とが対応していることが分かった。さらに、予想外のアロステリックな連絡方式によって、Cas9の2個のヌクレアーゼドメインが確実に協調して作動するようになっていることも明らかになった。これらの結果は、最初に起こるPAM(protospacer adjacent motif)認識やRNA–DNA塩基対形成の後に何らかの校正機構が働いて、これがDNA二本鎖切断を形成する前の最終的な特異性チェックポイントとして機能していることを明確に示している。

