Letter
神経科学:視床下部の性的二型性回路による母親による子の世話とオキシトシン分泌の制御
Nature 525, 7570 doi: 10.1038/nature15378
行動の性差は、行動の基盤にある神経回路の性的二型性に起因すると考えるのが一般的だが、それが実証された例は少ない。親による子の世話は子に対する複雑な定型行動で、多くの動物種に共通して見られる。マウスの仔に向けた行動には大きな性差がある。仔に初めて出会ったとき、未経産の雌は母性的行動を取るが、雄は通常無視し、攻撃することもある。本論文では、マウス視床下部の前腹側脳室周囲核(AVPV)でチロシンヒドロキシラーゼ(TH)を発現するニューロンは、経産雌で雄や未経産雌よりも数が多く、これが性特異的な育児行動を支配していることを示す。雌のAVPVのTH+ニューロンを破壊すると、母性行動が障害されるが、これらの細胞を光遺伝学的方法で刺激するかTH発現を高めると、母性行動は強化される。しかし、雄ではこの同じニューロン群は子の世話には全く影響を与えないが、雄間の攻撃を抑える。さらに、雌でAVPVのTH+ニューロンを光遺伝学的に活性化したりTH発現増強を行ったりすると血中オキシトシン量が増加するが、このニューロンを破壊するとオキシトシンレベルは低下する。また、AVPVのTH+ニューロンは、視床下部室傍核中のオキシトシン産生ニューロンに対して、単シナプス性の入力を送っていることも分かった。これらの知見から、母親による子の世話とオキシトシン分泌の制御におけるこのニューロン群の従来知られていなかった役割が明らかになり、成体脳の性的二型性と育児行動の性差の間の因果関係が証拠付けられた。

