Letter
有機化学:単純なピロール系出発物質からの(+)-バツェラジンBの簡便合成
Nature 525, 7570 doi: 10.1038/nature14902
アルカロイドは、塩基性窒素原子を持つ二次代謝物であり、化学や医学の分野で最もよく知られた生物活性天然物の1つである。実験室でアルカロイドを高効率で合成できれば、その生物学的特性の研究と最適化が可能になると思われる。しかし、窒素が塩基性と求核性を示し、酸化されやすい上、反応結果を予想外の形で(例えば立体化学的な不安定性や隣接基の関与などによって)変えてしまう可能性があるため、アルカロイド合成は複雑化しやすい。この問題に対処する試みによって、窒素の反応性を抑制する多数の保護基の開発につながった。しかし、こうした保護基を用いる手法では、一般的に反応ステップ数が増えてしまい、合成経路に支障が生じる。もう1つの方法として、含窒素芳香族ヘテロ環を合成前駆体として用いれば、窒素の反応性を弱め、合成戦略を簡素化することができる。今回我々は、そうした手法を用いて複雑な抗HIVアルカロイドである(+)-バツェラジンBを、単純なピロール系出発物質から9ステップ(最長直線経路)で合成することに成功した。この合成経路では、含窒素飽和ヘテロ環を用いたのでは実行が困難か不可能であると思われる数種の重要な変換反応を利用しており、芳香族試薬から出発する利点が明らかになっている。

