計算生物学:単一細胞のメッセンジャーRNA塩基配列解読で明らかになった腸管の希少な細胞タイプ
Nature 525, 7568 doi: 10.1038/nature14966
ある器官の発生と機能を理解するには、その器官の全ての細胞タイプの特徴を明らかにする必要がある。細胞の亜集団を可視化し単離するための従来の手法は、ごく少数の既知のマーカー遺伝子のメッセンジャーRNAまたはタンパク質発現に基づくものである。しかし、特定のマーカー遺伝子を明確にするのは大きな難題であり、この細胞タイプが希少であるときはなおさらである。幹細胞、短命の前駆細胞、がん幹細胞、あるいは循環腫瘍細胞などの希少な細胞タイプを明らかにすることは、正常組織や病変組織の生物学的特性をより深く理解するために非常に重要である。我々はこの難題に取り組むため、最初にマウス腸管オルガノイドから無作為に選択した数百の細胞のトランスクリプトームを解読した。腸管オルガノイドは、培養された自己組織化する上皮構造で、哺乳類の腸管で見られる全ての細胞系譜を含む。腸陰窩と同様に、オルガノイド芽は、持続的に様々な細胞タイプへ分化する幹細胞を含んでおり、量はそれぞれで大きく異なる。既存のコンピューター解析法では、豊富に存在する細胞タイプしか扱えないため、我々は単一細胞からなる複雑な集団で、希少な細胞タイプを明らかにするためのアルゴリズムRaceIDを開発した。我々は、このアルゴリズムによって、無作為に抽出したオルガノイド細胞の集団内に1つしか存在しない細胞タイプも明らかにできることを示す。このアルゴリズムを用いたところ、Reg4がホルモン産生腸管細胞の希少な細胞集団である腸内分泌細胞の新たなマーカーであることが分かった。次に、Reg4の発現を使ってこれらの希少細胞を濃縮し、この細胞集団内での不均一性を調べた。RaceIDで既知の腸内分泌細胞系譜の存在が確認でき、さらに新たなサブタイプが見つかり、これらはその後in vivoでも確認された。RaceIDの妥当性が確認できたため、我々はこのアルゴリズムをex vivoで単離したLgr5陽性幹細胞とその直接の子孫細胞に適用した。その結果Lgr5陽性細胞は、Lgr5陽性の分泌細胞のまれな細胞集団と混ざり合った、均一で豊富な幹細胞集団であることが分かった。我々は、正常あるいは病的器官で希少な細胞タイプおよびそれに関連するマーカー遺伝子を発見するためにこの手法が広く応用できると考えている。

