Letter
がん:別個のEMTプログラムが正常な乳腺幹細胞と腫瘍開始細胞を制御する
Nature 525, 7568 doi: 10.1038/nature14897
腫瘍開始細胞(TIC)はさまざまながんの転移性播種および臨床的再発の原因となる。TICと正常組織幹細胞の間に類似性が認められることから、ある組織内の正常な幹細胞プログラムの活性化がTICを生じさせる主要な機構になっていると考えられるようになってきた。この考えを裏付けるものとして、これまでに我々および他の研究者らが、Snailファミリーに属する、Slug上皮間葉転換誘導転写因子(EMT-TF)が正常な乳腺幹細胞の乳腺再構築活性のマスター調節因子として働くこと、そして乳がん細胞にSox9と共にSlugを強制発現させると、効率的にTIC状態へと入るよう誘導できることを明らかにしている。しかし、こうした以前の研究は、培養細胞株による異種移植モデルが中心で、EMT-TFの異所性発現が関与しており、その発現レベルは非生理的であることが多かった。今回我々は、遺伝子改変レポーターノックインマウス系統を用いて、乳腺上皮の基底層に存在し正常な乳腺を再構築する乳腺幹細胞と、管腔層起源の乳腺TICは、パラログであるEMT-TFのSlugとSnailをそれぞれ利用して、別個のEMTプログラムを誘導することを示す。概して、我々の知見から、TICと、対応する正常組織の正常幹細胞では類似した幹細胞プログラムが働いているように見えるが、それらのプログラムの詳細は顕著に異なっている可能性が高いことが示唆される。

