がん:発がん性PIK3CAによる多能性の回復が乳がんの不均一性を誘導する
Nature 525, 7567 doi: 10.1038/nature14665
乳がんは女性で最も発生頻度の高いがんであり、組織学的および分子的に異なるサブタイプに分類される不均一な腫瘍から構成される。PIK3CAおよびP53(別名TP53)の2つは、最も高頻度に変異が見られる遺伝子で、異なる種類のヒト乳がんに関連している。PIK3CAが誘導する腫瘍不均一性につながる細胞起源や機構は分かっていない。今回我々は、マウスで遺伝学的手法を用い、Pik3caによって引き起こされる腫瘍の細胞起源および、この遺伝子の変異が腫瘍不均一性に与える影響を明らかにした。意外にも、発がん性の変異型Pik3caH1047Rを、ケラチン(K)5-CreERT2マウスを用いて基底細胞に生理的レベルで発現させると、管腔のエストロゲン受容体(ER)陽性/プロゲステロン受容体(PR)陽性腫瘍の形成が誘導されたが、K8-CReERT2マウスを用いて管腔細胞に発現させると、管腔のER+PR+腫瘍あるいは基底細胞様ER−PR−腫瘍が生じた。p53の欠失とPik3caH1047Rの発現を同時に行うと、腫瘍発生が促進され、よりアグレッシブな乳腺腫瘍が誘導された。興味深いことに、Pik3caH1047Rを、単分化能の基底細胞に発現させると管腔様細胞が生じるが、単分化能の管腔細胞に発現させると基底様細胞が生じ、その後、浸潤性腫瘍に進行した。単分化能の前駆細胞にPik3caH1047Rを発現させた際に細胞運命が変化した細胞の転写プロファイリングから、これらの新しく形成された細胞ではがん遺伝子誘導性の大規模な再プログラム化が見られることが実証され、基底細胞および管腔細胞でのPik3caH1047R発現によって起こる異なる細胞運命への切り替えの特徴となる遺伝子シグネチャーが突き止められた。これは細胞起源、腫瘍の種類および異なる臨床転帰と相関していた。以上より、Pik3ca誘導性腫瘍の細胞起源が明らかになり、発がん性Pik3caH1047Rが腫瘍のイニシエーションの初期段階において通常は細胞系譜が限定された集団で多能性遺伝的プログラムを活性化して、将来的な腫瘍内不均一性の基礎をつくっていることが分かった。これらの結果は、腫瘍の不均一性を制御する機構を理解し、PIK3CA乳がんのイニシエーションを阻害する新しい治療戦略を開発するために重要な意味を持つ。

