Letter
量子物理学:超高速透過電子顕微鏡における量子コヒーレント光学位相変調
Nature 521, 7551 doi: 10.1038/nature14463
光を使った量子系のコヒーレント操作は、量子計算や量子暗号を含む将来の情報通信技術の要になると期待されている。量子波動関数への光位相の転写はコヒーレント相互作用の特徴の1つであり、量子状態の生成、同期、計測の基礎となる。原子や分子の近傍において光学的に位相変調された電子状態は、極端紫外パルス発生や軌道トモグラフィーを含む、アト秒科学の技術に不可欠である。一方、強力な自由電子ビームの量子コヒーレント位相変調はいまだ実証されていないが、もし実現すれば、アト秒スケールの電子パルスを用いた超高速イメージングや分光法が可能となる。今回我々は、電子顕微鏡ビーム中の自由電子集団のコヒーレント量子状態操作を実証した。我々は、超短電子パルスと光近接場の相互作用を利用して、電子の運動量状態の集団にラビ振動を誘起し、光駆動場の関数として観測した。ラビ周波数の等しい多準位量子梯子とスケーリングがよく一致することから、運動量空間において電子密度をコヒーレントに再形成する光駆動の「量子ウォーク」が観測されたことが分かった。また我々は、相互作用の後、光学的に生成した運動量状態の重ね合わせがアト秒電子パルス列に変化することを指摘する。今回の結果は電子密度の精密構造化を目的とした量子制御の可能性を明らかにするものであり、超高速電子分光法・顕微鏡法から、加速器科学や自由電子レーザーまで多岐にわたる応用が考えられる。

