構造生物学:F型ATP合成酵素の固定子aサブユニット中の、膜に内在する水平なαヘリックス
Nature 521, 7551 doi: 10.1038/nature14185
細胞内で共通のエネルギー通貨であるATPは、太古から存在する膜結合型ナノマシンのF型ATP合成酵素によって産生される。F型ATP合成酵素は、膜を介して形成された電気化学的勾配のエネルギーを使って、回転型の触媒機構によりATPを産生する。膜を横切って移動するプロトンが、8~15個のcサブユニットからなるリング状の回転子を駆動する。中心の軸がcリングの回転を触媒部分であるF1頭部に伝達し、頭部で一連のコンホメーション変化が起きてATPが合成される。この基本過程中でいまだに解決されてない重要な問題は、膜を通過するプロトンがATP産生を駆動する仕組みである。ミトコンドリアのATP合成酵素はクリステ膜中でV字形のホモ二量体を形成する。今回我々は、天然状態にあって活性を持つミトコンドリアATP合成酵素二量体の構造を、低温電子顕微鏡法を用いた単粒子解析によって、6.2 Åの分解能で決定した。この構造から、aサブユニット中に、膜に内在する4本の長い、水平に置かれたαヘリックスがあり、これらはcリングのヘリックスに対してほぼ70°の角度となるように配置された2つのヘアピンを形成していることが分かった。これまで、aサブユニット中の厳密に保存されてきている、膜に埋め込まれたアルギニンが、プロトンの輸送とcリングの回転とを連動させていると考えられてきた。保存されているカルボキシ末端aサブユニットの配列をフィットさせると、保存されているアルギニンが、プロトンに結合するcサブユニットのグルタミン酸の隣に来るようになる。このマップでは、溶媒が接近できる傾いたチャネルがミトコンドリアのマトリックスからこの保存されたアルギニンまで伸びていることが分かる。膜の膜間腔側表面にあるもう1つの親水性の空洞は、プロトンを重要なヒスチジン–グルタミン酸対へと直接運ぶ通路を形作っている。これらの結果は、回転型のATP合成酵素の構造と機能についての独自の新しい手掛かりを与えるもので、ATP産生とプロトンの移動とがどのようにして連動しているのかを説明できる。

