構造生物学:DNMT3Aの自己阻害と、ヒストンH3の誘導による活性化に関する構造的考察
Nature 517, 7536 doi: 10.1038/nature13899
DNAメチル化は重要なエピジェネティック修飾の1つで、遺伝子発現、ゲノムインプリンティング、エピジェネティック遺伝の調節を介して、発生のさまざまな過程に不可欠な働きをしている。哺乳類ゲノムDNAのメチル化は、胚発生の間にde novo型DNAメチルトランスフェラーゼであるDNMT3AとDNMT3Bによって行われ、メチル化パターンは発生段階や細胞の種類によってさまざまである。DNMT3L(DNA methyltransferase 3-like protein)は、DNMT3酵素のパラログだが触媒活性を持たず、Dnmt3aの活性化を誘導する。最近の複数の研究で、DNAメチル化とヒストン修飾との間に関連があることが確認されており、DNAメチル化の確立をヒストンが誘導する機構の存在が明らかになっている。Dnmt3aのATRX–DNMT3–DNMT3L(ADD)ドメインは、メチル化されていないヒストンH3(H3K4me0)を認識する。このヒストンH3尾部はin vitroでDnmt3aを刺激・活性化するが、その分子機構はまだ解明されていない。本論文では、DNMT3Aが自己阻害型として存在し、ヒストンH3尾部がそれを活性化するが、この活性化はDNMT3Lには依存しないことを示す。我々は、DNMT3A–DNMT3L複合体(自己阻害型)とDNMT3A–DNMT3L-H3複合体(活性型)の結晶構造を、それぞれ分解能3.82 Åと2.90 Åで決定した。構造解析と生化学解析によって、DNMT3AのADDドメインが触媒ドメイン(CD)に結合し、そのDNA結合親和性を抑制して酵素活性を阻害することが示された。ヒストンH3はADD–CDの結合を破壊してADDドメインの大きな動きを引き起こし、それによってDNMT3Aの自己阻害が解除される(ヒストンH3K4me0では、このような解除は起こらない)。これらの知見は、メチル化されていないH3K4が存在する場合に、メチル化酵素が適切な標的遺伝子座で主として活性化されるのを確実にするための、DNAメチル化調節の新たな機能を明らかにしており、このことは哺乳類ゲノム全域でH3K4me3とDNAメチル化の間に見られる負の相関の強い裏付けとなる。今回の研究により、de novo型DNAメチルトランスフェラーゼが当初ゲノムに配置されてから見られる予想外の自己阻害とヒストンH3が誘導する活性化について、新たな手掛かりが得られた。

