Letter
分子物理学:時間に依存する2電子波束の再構成と制御
Nature 516, 7531 doi: 10.1038/nature14026
2個以上の束縛電子の協調運動は、化学反応を含む原子や分子の非平衡過程を支配しているので、量子領域におけるそうした電子ダイナミクスの詳細な理解を深めることに大きな関心が集まっている。しかし、量子三体問題の厳密解は存在しないため、活性電子2個と原子核1個からなる最小系でも解析的には扱えない。そのため、ヘリウム原子に見られるような2個の相関する束縛電子のダイナミクスの実験的測定が魅力的なものとなっている。しかし、単一の活性電子や活性正孔の運動はアト秒の時間分解能で観察されているが、2電子運動に関する同種の実験はこれまで実現されていない。本論文では、ヘリウムの低位二重励起状態間の1.2フェムト秒量子ビートから、相関する2電子波束を再構成できることを示す。このビートは、強度可変可視レーザー場の存在下で、これまでになく高いスペクトル分解能で測定したアト秒過渡吸収スペクトルに現れる。可視レーザー強度を調節して、この2つの低位量子状態間の結合を調整し、位相敏感な量子干渉計としてファノ共鳴を使って、2個の相関電子のコヒーレント制御を実現した。ヘリウム原子に関する大規模な量子力学計算と良い一致が得られたことから、ここで報告したこの種の多次元分光実験によって、より複雑な系の基本的な数体量子動力学理論を検証するベンチマークデータが得られると期待される。さらに、今回の手法から、基礎化学反応の核心となる準安定電子遷移状態を、部位特異的に測定し制御する手段も得られる。

