Letter

化学物理学:sII型クラスレート・ハイドレートを空にすることによって得た氷XVIの構造と特性

Nature 516, 7530 doi: 10.1038/nature14014

ガス・ハイドレートは、氷のような固体で、水素結合した水分子からなる結晶性ホスト骨格(クラスレート)内に形成されたケージの中に、ゲスト分子やゲスト原子が捕捉されたものである。自然界では深海底に、また永久凍土として大量に存在する他、ガスのパイプライン中に形成されてパイプラインをふさぐこともあり、地球上や地球外に広く存在すると考えられている。こうしたありふれた多くの包接化合物の自然な評価基準は空のハイドレート格子だが、ゲスト種がホスト骨格を安定化させているため、空のハイドレート格子は実験では作製できないとされることが多い。しかし、十分小さいゲストなら、取り除いて空の準安定クラスレートを残す可能性が示唆されており、実際、ゲストの存在しないSiクラスレートやGeクラスレートが得られている。今回我々は、この手法を水系クラスレートにも適用できることを示す。すなわち、構造II(sII)型のネオン・ハイドレート小粒子を5日間連続的に真空排気してゲストを全て除去し、空のハイドレートの結晶構造、熱膨張率、準安定限界を決定できた。今回得られた空のハイドレートは、実験的に確認された17番目の氷結晶相で、現行の氷の命名法に従うと「氷XVI」となる。この氷XVIは、密度が0.81 g cm−3(既知の水の結晶相の中で最も密度が低い)で、陰圧(つまり張力下)で安定な水の低温相であると予想される。我々は、この空のハイドレート構造が約55 K未満で負の熱膨張率を示し、ゲストが充填されたハイドレートよりも、機械的に安定で低温での格子定数が大きいことを見いだしている。こうした観察結果は、クラスレート・ハイドレートにおける運動論的効果とホスト–ゲスト相互作用の重要性を立証するものである。空のハイドレートの特性評価をさらに進めることによって、こうした特異な材料の構造、特性、挙動の理解を深めることができると予想される。

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