神経科学:精神疾患のヒトiPS細胞モデルにおけるシナプスの調節異常
Nature 515, 7527 doi: 10.1038/nature13716
多くの神経精神疾患の根底には、神経発達における構造的および機能的な接続性の変化を伴った調節異常があると考えられており、「シナプス病」は統合失調症の生物学的基盤を説明する主要な仮説である。この仮説は、ヒトの死後脳の解析や遺伝学的研究により間接的に支持されているが、患者のニューロンにおけるシナプスの病態生理や、精神疾患への感受性遺伝子がヒトでシナプス異常を引き起こし得る仕組みについては、あまり分かっていない。たいていの精神疾患の遺伝的特徴は、さまざまな表現型を示す浸透度の低い多くの感受性変異体があるために、非常に複雑である。単一の遺伝子座がおそらく感受性の原因となっている、複数の患者を有するまれな大家系は、複雑な疾患の研究に非常に価値があることが証明されている。本研究では、主要な神経疾患と共分離されるdisrupted in schizophrenia1(DISC1)遺伝子にフレームシフト変異を持った、ある家系の4人から誘導多能性幹(iPS)細胞を作製し、さらに遺伝子編集により、同質遺伝子系統の複数の異なるiPS細胞株を作製した。我々は、iPS細胞から誘導した前脳ニューロンにおいて、変異型DISC1がシナプス小胞の放出を低下させることを明らかにした。変異型DISC1は、野生型DISC1タンパク質を枯渇させ、さらにヒト前脳ニューロンにおいてシナプスや神経疾患と関連する多くの遺伝子の発現調節を異常にする。我々の研究は、精神疾患に関連する変異が、ヒトのニューロンにおいてシナプス異常や転写調節異常の原因となることを示しており、精神疾患について分子レベルとシナプスレベルでの原因病理に新たな知見をもたらすものである。

