量子物理学:電子の量子トモグラフィー
Nature 514, 7524 doi: 10.1038/nature13821
量子状態に関する完全な知識があれば、起こり得る全ての測定結果の確率を予測できる。これは量子力学にとって極めて重要な段階である。量子状態に関する知識はトモグラフィーによって得ることができ、原子、分子、スピン、光子の状態に適用されてきた。光の波長やマイクロ波の光子に対しては、未知の状態を大きな振幅のコヒーレント光子場と混合させることで標準的なトモグラフィーを実現できる。しかし、凝縮物質中の電子などのフェルミオンでは、フェルミオン場が小さい振幅(最大でも1状態当たり1個の粒子)に制限されているため、この方法は適用できず、これまで電子波動関数のトモグラフィーは実現していない。最近の量子導体に関する提案では、電子波干渉計の時間依存電流や、電子ハンブリー・ブラウン/トゥイス干渉計の電流雑音の測定によって、電子波動関数を得られることが示された。今回我々は、極めて高い雑音感度が必要であるにもかかわらず、そうした測定が可能であることを示し、バリスティック導体へ注入した単一電子の準確率密度関数、つまりウィグナー分布関数を再構成したことを報告する。この導体上のコンタクトにローレンツ型の電圧パルスを繰り返し印加することで、多くの理想的な電子をレビトンと呼ばれる良く制御された量子状態に準備することができる。電子ビームスプリッターを通った後、レビトンは弱い振幅のフェルミオン場と混合される。このフェルミオン場は、周波数が電圧パルス周波数の倍数の小さい交流電流が生成する、電子–正孔対のコヒーレントな重ね合わせによって形成される。ビームスプリッターでの電子と正孔のレビトンとのアンチバンチングによって、レビトンの分配統計が変化し、その雑音変動からレビトンのエネルギー密度行列要素が得られる。量子トモグラフィーがこのように実証されたことから、バリスティック導体による電子量子光学の開発分野がフェルミオンによる量子情報の新しい試験台となる。これらの結果は、電子の飛行する量子ビットの量子もつれ、電子デコヒーレンス、電子相互作用を調べるのに直接応用できる可能性がある。さらにこれらは、冷却フェルミオン(つまりスピン1/2の)原子に適用できる可能性もある。

