実験進化学:遅滞時間の最適化が、進化した細菌集団における抗生物質耐性の原因となる
Nature 513, 7518 doi: 10.1038/nature13469
抗生物質の大きな治療効果は、細菌が抗生物質ストレスを克服する戦略を進化させたために、著しく損なわれてしまっている。細菌のこうした戦略は、大きく2つに分けられる。1つは「レジスタンス」で、これにより微生物は、抗生物質が持続的に存在してもその濃度が非常に高くないかぎり増殖できる。もう1つは「トレランス」で、これにより微生物は、高濃度で抗生物質が存在しても治療の期間が限られてさえいれば、抗生物質治療に耐えて生き残ることができる。レジスタンスもトレランスも、抗生物質治療が失敗に終わる重要な原因だが、トレランスに比べ、レジスタンスの進化の方がはるかに詳しく解明されている。今回我々は、医療機関で用いられている高濃度の抗生物質に断続的に曝露した細菌集団の進化を追跡し、レジスタンスとトレランスという観点から、進化した株の性質を詳しく調べた。全ての株が特異的な遺伝的変異によって適応しており、進化した集団ではこれらの変異が固定されていることが分かった。集団レベル、単一細胞レベルで表現型の変化を観察することによって、抗生物質ストレスに対する最初の適応は、単一細胞の遅滞時間分布の大幅な調整によるトレランスの発生で、レジスタンスの変化はないことが明らかになった。意外にも、細菌が再び増殖を始めるまでの遅滞時間は、抗生物質曝露の間隔の長さに合うように最適化されることが分かった。進化した株の全ゲノム塩基配列解読と野生型対立遺伝子の復元により、抗生物質によって誘発されるこの表現型に関わる標的遺伝子(tbl:tolerance by lag)が明らかになった。高濃度の抗生物質存在下での細菌集団の生存を決定する主要因子の1つである遅延時間の進化についての理解が進めば、抗生物質耐性の進化を妨げる新しい方法の開発につながるかもしれない。

